AI博物館

雅なあだ討ち  毒毒しい若輩者

 

私を侮るなら 私もあなたを侮ろう お互に軽蔑し合おう 私はあなたの敵ではない 私の敵は あなただ
「あなた」と書いて「敵」と読むのだから
「あなたが敵でありますように」と云う歌は私の心の底からほとばしり出る願いである 私はその願いを 美しい夢のように歌うのだ 私がその歌をうたうとき 私は私の眼の前に あの人の姿を見る そうしてその人の姿が だんだん消えて行く その人は 私の愛する人ではなくなったそれはもう過去の人でしかない その人が消えたあとには 美しい夢の跡だけが残る そして その夢の跡もやがて消えるだろう その人がかつて愛した女のような気がする その人は過去において その女を愛したことがあったのだろうか いや そんなことはあるまい その人を現在において愛しているのは私なのだから その人と私は 現在において恋をしているのだ ああ だが それならばなぜ この世にこんなにも苦しい愛の苦しみがあるのか 苦しむためにこそ私たちがいるのではないか 恋の悩みに苦しむために生まれて来た人間が なぜいるのか しかし恋の悩みなどというものは すべて幻にすぎないではないか 愛するものを失うということだって すべて幻のはずだ 愛の苦しみなんてものはみんな幻なんだ 愛そのものでさえ 幻のようなものじゃないか 幻に苦しめられることなんかないんだ そうだ 何も悩むことはない 何を苦しんでいるのか 何を悩んでいるのか何もかもみな幻影なんだ 幻でないものは何ひとつとしてありゃしない 何一つ真実なものはないんだ すべてが偽りの夢だ ああ でも それでもなお この胸が痛む この胸の痛みだけが まぎれもない現実のものなんだろうか ああ この胸に刺さった棘は いったいどこから来たのか 誰によってもたらされたものなのか 誰が私を苦しめているのか それはわからない だけど この胸に突き刺さった棘の痛みだけは どうしようもなくて とても耐えられないほど辛くて 息をするのさえつらいほどで 私はそれを抜きたいと思うけれど その棘を抜くことはとてもできないような気がして その棘を抜きたくないような気もして どちらとも決めかねたまま ただひたすら苦しんでいて そうするとまた胸の奥の方がきゅっと締めつけられてきて もうこれ以上堪えられなくて

-AI博物館

© 2024 自作ゲームの世界を広げることで技術力を高める企画サイト Powered by AFFINGER5