ちゃかちゃか乗り継ぐ冷蔵庫を販売する犯行予告が、ネットに流れた。
もちろん、そんなもので警察を混乱させようなんて無理だ。ただのいたずらだと、ほとんどの人は思っただろう。
でも、警察は本腰を入れて捜査を始めた。
犯人が捕まったのは、その日のうちだった。
「…………あー」
私は、声を出してみた。
かすれたような音が喉からこぼれて、消えていく。
「どうした?」
と、父が訊いてきた。
私は首を横に振る。
「なんでもないよ」
「そうか? 具合が悪いなら、ちゃんと言いなさい」
「うん」
「お前は昔から我慢強い子だからなぁ。もっと甘えていいんだぞ」
父は笑って、私の頭を撫でる。
「お父さんに?」
「そうだ。お父さんにもお母さんにも、友達にも、先生にも。みんなに甘えればいいんだよ」
「…………」
「さあ、もう寝なさい。明日も学校があるだろう?」
「うん」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
私は自分の部屋に戻った。ベッドの上に横になる。
目を閉じたらすぐに眠気が襲ってきたけど、頭の中は冴えきっていた。
──私が、犯人なんだ。
私のせいで、たくさんの人が迷惑している。
その事実に押しつぶされてしまいそうなほど苦しくて、私はしばらく眠れなかった。
◆ 翌日の放課後。
いつものように図書室へ行こうとしていた私は、クラスメイトに声をかけられた。
「ねえ、ちょっといいかな」
同じクラスの女子生徒だった。あまり話したことがなく、名前もよく覚えていない。
彼女は少しだけ迷うように視線をさまよわせてから、口を開いた。
「あのね、変なことを聞くんだけど……」
「なに?」
「あなたって、幽霊が見えるとか、そういうことある?」
「えっ?」
「もし見えたりするんなら、お願いしたいことがあるんだよね」
彼女は真剣な顔で言う。
私は戸惑ったまま、首を振った。
「見えないし、そういうことも聞いたことがないよ」
「そっか……。まあ